海辺の博覧会海辺の博覧会
(2007/08)
芦原 すなお

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「三丁目の夕日」のヒットと関係あるのかどうか、著者の少年時代と思しき1960年前後の悪ガキたちの遊びと生活を描いた、ユーモアとノスタルジーたっぷりの少年小説である。

著者は香川県観音寺市の出身だから、この物語の舞台も多分そうなるのだろう。風光明媚で、何となくのんびりした昭和の田舎の風景が彷彿としてくる。

いちおう「ぼく」という一人称で語られているが、主人公は五人の子供である。男勝りで知恵が回り口も達者なマサコを大将に、ひとの良さげな男子二名、やんちゃな兄弟の五人組が実に楽しい。古語は辺境に残ると言われているが、「のう、アキテル(と兄を呼び捨てにする)、〜してくれ。たのまい、の、たのまい。」と駄々をこねるフミノリと、すかさず三歳下の弟の頭を張り飛ばすアキテル兄弟の掛け合いは狂言のようだ。

そして、多少精神に変調を来した老人(主要な人物だ)やゴクツブシや生活能力の欠如した父親など、中途半端な人たちがエヘラエヘラと生きていた時代は実にユートピアに感じられるが、やはりユートピアとして描いているからこそなのだろうなぁ。


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歩く歩く
(2007/05/25)
ルイス・サッカー

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「穴」のスピンオフ作品で、「穴」の主人公スタンリーの収容所仲間だったアームピット(脇の下)が主役になっている。X・レイも登場しており、生き生きと描かれている。「穴」の時にはどちらもスタンリーにまとわりつく悪のイメージしかなく、このキャラ造形は意外だった。

地獄のグリーン・レイクキャンプから世間に戻ったアームピットは、高校に通学しながら造園潅漑会社でアルバイトし(穴掘り技術が認められている(笑))、真面目に更正しつつある。

X・レイの方は口の上手い、憎めない小悪党で、人気黒人アイドル・カイラ・レデオンのコンサートチケットを高値で転売して一儲けしようとアームピットに持ちかけ、ダフ屋業に出資させるところから、物語の幕が開く。

親からさえ今ひとつ信頼されていないアームピットだが、隣家の白人少女ジニーとは大の仲良しだ。ジニーは脳性麻痺を持っており、一方的にアームピットが保護する関係かと思えばさにあらず、アームピットはジニーとの友情に感謝しているのだ。この関係が暖かくて良い。

転売用に購入したチケットでジニーとカイラ・レデオンのコンサートに出かけたアームピットはX・レイに偽造チケットを渡されており、逮捕されかけるトラブルになるが、居合わせた市長のおかげで救われ、ついでにカイラ・レデオンの招待でステージ横から観覧することになる。そしてカイラがらみのトラブルに巻き込まれ・・・。

アームピットに対しては誠実だし筋を通すX・レイとの友情、ジニーとの友情、カイラとの淡く切ない恋愛、人種差別、両親の無理解、立派な大人たちの理解など、随所に読みどころのある、痛快でユーモラスなYA青春小説である。アームピットがグリーン・レイク・キャンプを出所した時、カウンセラーに「あなたの将来は激流を上流に向かって歩くようなものだ。大股で一気に歩こうとすると足下をすくわれるから、小さく着実に歩きなさい」と教えられていることに基づくのだろう。暴力で収容されたアームピットだが、これだけ堅実に生きているのだから大丈夫だと思わせる結末だ。


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穴  HOLES穴 HOLES
(2006/12/15)
ルイス・ サッカー

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4代前の先祖が豚を盗んだ罪によってかけられた呪いにより、まずい時にまずい場所に居合わせて不運を背負い込む運命となったイェールナッツ家の五代目スタンリー(太っちょの少年)は、先祖の前例通り、有名野球選手がチャリティーに寄付したスニーカーを盗んだという冤罪で矯正キャンプに送られる。

問題を起こした収容少年たちは、日がな一日直径・深さとも1.5mの穴を掘らされるのだが、冷酷な女所長や指導員の虐待に耐えかねたスタンリーは、ついに仲間のゼロと共にキャンプを脱走、この悪運から逃れられるか、というストーリーである。

導入部はカフカあたりの不条理を思わせるがどうだろうか。現在は砂漠と化しているグリーンレイクキャンプは、かつては緑あふれる豊饒の地であったが、悲恋の歴史を秘めて現在のような乾燥地帯になってしまったものらしい。先祖の呪いも含めて随所に伏線が張り巡らされ、ラストシーンに向かって終息する手際が見事。黒人少年ゼロとの友情も泣かせる。ラストのあたりはトム・ソーヤーの模倣に思えた。

アメリカのミステリーや映画では、刑務所所長が刑務所全体を私物化し、また、受刑者の間にも全国的な秘密結社的無法地帯が存在するなど、一種の無法地帯として描かれているものが多々登場するが、本作の矯正キャンプも私営のようで、支配者が私利私欲によって穴を掘らせているなど、同様の印象を受ける。不条理+刑務所もの+トム・ソーヤーな物語である(笑)。


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テーマ:児童文学
ジャンル:本・雑誌