2009年08月17日 (月)
![]() | 穴 HOLES (2006/12/15) ルイス・ サッカー 商品詳細を見る |
4代前の先祖が豚を盗んだ罪によってかけられた呪いにより、まずい時にまずい場所に居合わせて不運を背負い込む運命となったイェールナッツ家の五代目スタンリー(太っちょの少年)は、先祖の前例通り、有名野球選手がチャリティーに寄付したスニーカーを盗んだという冤罪で矯正キャンプに送られる。
問題を起こした収容少年たちは、日がな一日直径・深さとも1.5mの穴を掘らされるのだが、冷酷な女所長や指導員の虐待に耐えかねたスタンリーは、ついに仲間のゼロと共にキャンプを脱走、この悪運から逃れられるか、というストーリーである。
導入部はカフカあたりの不条理を思わせるがどうだろうか。現在は砂漠と化しているグリーンレイクキャンプは、かつては緑あふれる豊饒の地であったが、悲恋の歴史を秘めて現在のような乾燥地帯になってしまったものらしい。先祖の呪いも含めて随所に伏線が張り巡らされ、ラストシーンに向かって終息する手際が見事。黒人少年ゼロとの友情も泣かせる。ラストのあたりはトム・ソーヤーの模倣に思えた。
アメリカのミステリーや映画では、刑務所所長が刑務所全体を私物化し、また、受刑者の間にも全国的な秘密結社的無法地帯が存在するなど、一種の無法地帯として描かれているものが多々登場するが、本作の矯正キャンプも私営のようで、支配者が私利私欲によって穴を掘らせているなど、同様の印象を受ける。不条理+刑務所もの+トム・ソーヤーな物語である(笑)。
2009年04月23日 (木)
![]() | 青空のむこう (2002/05) アレックス シアラー 商品詳細を見る |
交通事故で死者の世界へ来てしまったハリー(10歳前後と思しき少年)は、姉のエギーと口げんかをした直後に死んでしまったことで、姉に悲惨な思いをさせているに違いないことを悔い、何とか仲直りしたいと考えている。
そして、母を捜して150年間死者の世界にとどまり続けるアーサー少年と知り合ったハリーは、この世へと連れてきて貰い、何とか家族の元にたどり着こうとするのだが、学校ではすでに自分が忘れられかけていることにショックを受けつつも、仲の悪かったクラスメートの真情を知り、自分の人生の至らなかった部分を省みたりする。
優しく切ない幽霊ファンタジーであるが、本書での宗教観は「フレディ/レオ・ブスカリア/著 , 三木卓/訳」のテーマや日本的アニミズムに近いような気もしており、易しく分かりやすい言葉で死を説明しようとしている児童書ではないだろうかと思う。
因みに「フレディ」は「葉っぱのフレディ」版の方が有名だが、hebakudanさんに三木卓翻訳版を教えて頂き、大いに共感しつつ読了したものである。
2009年04月09日 (木)
![]() | チェスト! (2007/12) 登坂 恵里香 商品詳細を見る |
主人公の吉川隼人は、薩摩伝統剣道の自顕流(示現流とはまた別の「じげんりゅう」らしい)を学ぶ、曲がったことが嫌いな活発な少年(小6)で「嘘をつくな。弱い者をいじめるな。負けるな。」の精神を範としている。しかし水に対する恐怖が強いカナヅチで、学校の伝統行事である錦江湾横断遠泳大会を2年続けて仮病で逃避しているヘタレな面もあり、この手の小説にはうってつけの、好感の持てる奴だ(笑)。海の男である脳天気な父ちゃんの厳命でついに遠泳に挑戦しなければならなくなるくだりは実に笑わせてくれており、ユーモラスな少年小説かなと思っていたらそれだけではなかった。
転校生の矢代智明は「努力が嫌い」と広言し、「嘘をつくな。弱い者をいじめるな。負けるな。」の教えを、管理者にとって都合のいい妄言だと喝破する、怜悧で狷介な少年である。しかし、実際には弱者に対する思いやりを持っていることを、隼人と、過敏性腸症候群を持つためにからかいの対象になっている成松雄太は知っており、友情とは呼べないまでも、何とはなしの交友関係が三人の間に結ばれるのだ。しかし、うちとけない転校生に対する陰湿ないじめもあり、それに加担する保護者が嫌な感じで描かれているのがいかにも現代的か。
智明の作る壁はとても厚く、子供にとっては過大すぎるトラウマがぞっとするようなイメージと共に語られているが、そういうものからの離脱や克己が本書の大きなテーマでああろう。からかいの対象でもある雄太も実は強い思いを秘めており、健気な少年たちに思わずエールを送りたくなる「涙と笑いと友情と成長の物語」だ(陳腐な表現だが(笑))。
何とはなしに「天使で大地はいっぱいだ/後藤竜二」のストーリーを思い起こさせるが、児童文学というより、大人が読むために少年を主人公にして書かれた小説という感じで、重松清に近いやり方かと思う。




